BRUXISM
歯ぎしり外来
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歯ぎしりとは?
歯ぎしりは無意識下、例えば寝ているときやぼーっとしているときに上下の歯を擦り付けてしまう癖、習慣のことを言います。夜寝ている時にギリギリ歯ぎしりの音がする、と言われたことがある人もいると思います。歯医者さんの世界ではよく3つのカテゴリーに分けて考えています。
①グラインディング(歯ぎしり)
②クレンチング(食いしばり)
③歯列接触癖(TCH)
*①と②を総称してブラキシズムということもあります。
なぜブラキシズムは
起こるのでしょうか?
もちろん、スポーツをしているときや、重い荷物を運ぶときなど、「意識的に力が入っているとき」にはぐっと歯を食いしばるものです。ここで問題なのが、なぜか「無意識下で力が入ってないのにブラキシズムが起こっている」ことです。
原因については様々な説があり、
・ストレス
・疲れ
・アルコール
・睡眠時無呼吸症候群
・抗うつ薬
・喫煙
などありますが、正確なことはわかっていません。
現在出ているデータを元にすると子供で10~20%、成人で10%程度の方がブラキシズムを行っているとされており、特にアジア人ではその頻度が高いとされています。
※表は左右にスクロールして確認することができます
ブラキシズムの 自覚 |
アフリカ人 | アジア人 | アメリカ人 | ヒスパニック |
---|---|---|---|---|
有 | 9.4% | 24.6% | 23.1% | 16.9% |
無 | 90.6% | 75.4% | 76.9% | 83.1% |
(ETHNICITY AND BRUXISM, Robert A.Hicks, Perceptual and Skills,1999,88,240-241)
覚醒時、就寝時共にブラキシズムを行う可能性があり、無意識で行なってしまうが故に防止することが非常に難しい習慣です。また無意識ゆえに発見が難しく、特に就寝時ブラキシズムは、歯ぎしりならご家族が気づいてくれる場合もありますが、食いしばりは歯に相当のダメージを受けるまで気づかずに放置してしまうことが多いです。
歯ぎしりを続けると
どうなる?
虫歯や歯周病になると
痛みが出る
これはみなさまが強く持たれているイメージになると思いますが、実は歯の痛みの種類として「歯に強い力をかけすぎて痛い」というものもあります。専門的なワードを使えば、「咬合性外傷」と呼ばれるもので、頻度としては虫歯や歯周病による痛みと同じくらい多く、状態としては手や足でいう打撲や捻挫のようなものです。
そもそも上の歯と下の歯が接触する時間は1日あたり20分程度が理想と言われています。逆に言えば、人間の歯はもともと1日20分は力がかかっても大丈夫な様に設計されています。ブラキシズム、TCHがある方はその時間を超えて力をかけてしまう上に、「無意識下での噛む力は食事の際の噛む力の5~10倍」と言われています。
塩分、糖分の取り過ぎが高血圧や糖尿病のリスクを上昇させる生活習慣病と同じで、「毎日歯に強い力をかける習慣」はほぼ確実に体へのダメージをもたらします。
ブラキシズム、TCHをお持ちの方には以下のような症状が出る場合があります。
歯の磨耗
経年的に歯は磨耗するものですが、特に著しい磨耗を認める場合があります。
歯のクラック(ひび)
強い咬合力は歯にヒビを入れる可能性があります。このヒビを起点として虫歯ができたり、歯全体が割れる場合があります。
知覚過敏
原因は種々ありますが、歯に対してかかる力も一つの原因といわれています。また磨耗して歯が薄くなることでも知覚過敏の症状が出ます。
咬合痛、咀嚼痛
歯も強い力がかかり続けると捻挫のような状態になり、食事の際に噛むと痛むようになります。
くさび状欠損(WSD)
歯に強い側方力がかかると歯の付け根あたりがかけてくるといわれています。知覚過敏や虫歯の原因となり得ます。
歯肉退縮
よく歯茎が下がると表現されます。症状がなければ基本的に治療の必要はありませんが、知覚過敏や見た目が気になる場合は対処が必要です。
隣接面の虫歯
歯のクラックを起点として歯と歯の間に虫歯ができることがあります。非常に発見のしづらい虫歯で、気づいた時には大きな虫歯になっていることが多いです。
歯の破折
クラックが進行すると歯が割れてしまう場合があります。歯の根まで割れてしまうと抜歯に至ってしまう場合もあります。
その他
顎関節や頬部の痛み、顎関節症の原因となる場合もあります。
これらの症状は初期段階ではいずれもの大きな問題、痛みにはなり得ませんが、放置することで手遅れになる場合もある怖いものです。疑いがなくても、定期的な検診でチェックを行ってもらうほうが良いと言えます。
診断方法は?
自覚症状があるかどうか、が1つの重要な診断基準になります。
具体的には、
・起床時の顎の不快感や疲れ、張り
・起床直後に強い知覚過敏の症状
・ご家族から歯ぎしりを指摘された経験
などがあります。
また、客観的な診断基準としては、
・歯の異常な咬耗
・顎の筋肉(咬筋)の異常な張り
・歯の表面に多数のクラック
などが見られるかどうかがあります。
当院ではこれらの診断基準と合わせて、「筋電図」による検査を取り入れております。ブラキシズムがある方は、ない方に比べると顎の筋肉(咬筋)の力が強い傾向にあり、筋電図を用いればその力を数字として見ることができるようになります。また、これまでブラキシズムの症状を自覚されていない方やブラキシズムを始めて日が浅い方は、症状が出るまで知らず知らずのうちに歯にダメージを与えてしまいますが、一度筋電図での検査を行えば、ブラキシズムが起こっている可能性を早期発見することができます。
*写真のように電極を頬に装着してパソコンのモニター上で筋力を測定することができます。
あらゆる病気に対して言えることですが、早期発見早期治療が1番です。筋電図検査をご希望の患者さまがいらっしゃれば、お気軽にお申し付けください。
対策方法は?
①スプリント
いわゆるマウスピースです。ナイトガードとも呼ばれることがありますが、主に就寝時に装着いただきます。
スプリントを装着することによって、ブラキシズムが起こった際に歯へのダメージを軽減することができ、長期的に歯を守ることにつながります。現在のブラキシズムに対する第1選択とも言える治療方法ですが、以下に挙げるようなデメリットもあります。
・継続使用で劣化するため数年以内で再作成が必要になることが多い
・寝るときに違和感を感じる
またブラキシズムそのものがなくなるわけではないので、起床時の顎の疲れ等の症状は緩和できない可能性があります。
②ボツリヌストキシン
製剤
近年台頭してきたブラキシズムへの対症療法の一つで、よく美容領域でも名前を聞くお薬です。これは、ボツリヌス菌という細菌の持つ毒素(ボツリヌストキシン)の成分の一部を抽出し、それを生体内で安全に使えるように加工したものです。ボツリヌストキシンはそもそも筋肉の作用を弱める働きがあり、歯科で応用されるボツリヌストキシン製剤も「噛むために使う筋肉(咬筋)」の力を弱め、そもそもブラキシズムが起こらないようにするというものです。
元々が「細菌の毒」ということもあり、良くない印象を受けるかもしれませんが、ほとんどアレルギー等の事故もなく安全に使用できるとされています。
一度咬筋にボツリヌストキシン製剤を注射すると、その効果は約半年程度持続すると言われています(患者さまによって個人差はあります)。その後は半年ごとに定期的に注射を打たなければブラキシズムを再発する可能性はありますが、打つ回数が多くなるほど持続時間が長くなるという報告もあります。また、ボツリヌストキシン製剤の注射によって、そもそも筋肉が使いづらい状態となります。これは腕や脚でのイメージと同じで、筋肉は使えば使うほど、大きく強くなっていきます。逆に使わなければ、小さく弱くなります。そのため患者さまによっては、筋肉が小さくなることによりお顔の輪郭に変化を感じる方もいるかもしれません。
実際におこなう処置としては、左右の頬に注射を打つだけなので、お時間としても15分程度でおわり、術後の疼痛もほぼありません。
もしも歯ぎしりに悩まされているけど、マウスピースをつけると寝られないなど、お悩みをお持ちの方は、そのまま放置せずに一度当院にご相談ください。